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動画配信サービスで「エアポート」と検索するとチャールトン・ヘストン主演の「エアポート’75」やアラン・ドロン主演の「エアポート’80」に混じって「エアポート2018」「エアポート2020」などが表示されると思います。
まるで長年続くシリーズのように見えますが、これらの作品の大半はアメリカの映画製作会社「アサイラム(ASYLUM)」の作品です。
同社は劇場公開を前提にせず、短期間に低予算で撮影する手法を得意としており、世間的には「B級映画」として知られています。ただ、製作される作品の多くが大手映画会社の製作する有名タイトルの模倣や便乗する「モックバスター」と呼ばれるものです。
例えば「トランスフォーマー」の新作が公開されたタイミングでタイトルや内容が似通った作品を展開することで、「トランスフォーマー」の新作と誤認させたり、似たような作品を観たい視聴者に訴求するビジネスモデルといえます。
モックバスターは徹底したコスト削減で製作されています。同一映画内でのCGの使い回しは当然として、「素人が作ったのか?」と思うほどの、初代プレイステーションで見られたようなCGには、きっと3DCGアセットなども利用されているはずです。
ちなみに、3DCGアセットとは、3Dモデルやテクスチャ、アニメーション、音声など、CGやゲームの制作で使う素材データの総称です。制作現場では、既存のアセットを活用することで、ゼロから作る手間を省き、制作をより速く進めるために利用されます。
その一方で低予算で製作された映画の中には場面展開を極力減らし、様々なアイディアで乗り切り、製作された名作映画はたくさんあります。
そのため、大作映画の知名度に便乗したモックバスターを「B級映画」に分類するのはどうかと感じる部分もあります。
ただ、それは別にして僕は昔から物語の矛盾や映像の品質は一切考慮せず、「そんなことある?」よりも「次はどんなバカな展開を見せてくれるのだろう」とモックバスターを楽しんで観てきました。時間の無駄だとしてもB級映画からしか摂取できない栄養があるわけです。
20代後半までは深夜や週末は映画を観ていましたが、子供の公共交通機関の運賃が大人料金になったことで僕の自由時間が増えたことも影響しているのかもしれません。
これまで料金だけ払い続けて、年に1つ観るか観ないか程度だったのに、急に動画配信サービスで映画を観るようになった僕が最近、鑑賞したB級映画を紹介したいと思います。
全く緊張感がない航空機パニック映画
2022年に製作された「エアポート2022 ザ・トップガンナー」を鑑賞しました。
日本語タイトルでは「エアポート2022」となっていますが、原題は「Top Gunner: Danger Zone」のため、2022年公開の「トップガン マーヴェリック(Top Gun: Maverick)」を意識していると考えられます。
映画は状況がよく分からないまま、アメリカ軍の2機のF/A-18と所属不明のMiG-35とのドッグファイトから描かれています。「Su-35じゃなくて…MiG-35?本当に?」と一瞬考えましたが、論点はそこじゃないと悩まないことにした矢先、脱出できないというよく分からない理由でF/A-18は撃墜されました。
それから10ヶ月後、急進右派「パヴデクシェン」のアジトにFBIが突入するシーンで幕が開きます。やはり状況がいまいち分からないまま、大量の火薬が見つかり、なんやかんやあってコースタル航空2191便に爆弾が仕掛けられていることが発覚します。
しかし、状況は切迫しているのにFBI捜査官と犯人との緊張感のないやり取りでは、ダンテ・アリギエーリの代表作「神曲」のくだりが引用されているので、英語圏の方にとっては何かしらの隠喩かパロディなのかもしれません。
とはいえ、タイトルは「トップガン マーヴェリック」を意識しているはずなのに、内容は1970年公開の「大空港」に近いので、日本語タイトルの「エアポート2022」はあながち間違っていないのかもしれません。
作中に「ヴォドロレシカ」「ヴォドロレシカ人」という単語が頻繁に登場するのですが、ずっと「何を言っているんだよ」と感じていましたが、映画後半で「今回の爆破事件の黒幕の国家の名前?多分…?」みたいなことがなんとなく見えてきます。
また、客室乗務員を演じるアンナ・テルファーとマイケル・パレ演じるトニー・ウィルクスが機内に仕掛けられた爆弾を探すシーンがありますが、「このおっさん誰やねん」と感じながら観ていると、映画中盤で「航空警察官」と名乗るシーンがやっと出てきます。
終始そんな感じで、物語の展開や何度も使い回されるショボいCGなど、ツッコんだら負けみたいな展開の連続ですが、それでも、どうしてもツッコミたい部分だけを挙げると、
- 露骨に怪しい黒いベースボールキャップの乗客は犯人じゃない
- セリフではF-16なのに登場する戦闘機はF/A-18
- アメリカ領内に容易に侵入する複数の敵戦闘機
- 敵戦闘機が発射したミサイルを回避する旅客機
- 映画終盤で敵戦闘機の機銃に撃たれて航空機の操縦士、副操縦士が死亡
- 映画終盤で航空機に持ち込まれた爆弾をハッチから機外に投げ捨てた瞬間、偶然、敵戦闘機に当たり撃墜
と、こんな感じです。決してお勧めはしませんが、観るだけ時間の無駄でした。
映画終盤のドッグファイトのシーンで主人公が乗る旅客機に迫るミサイルをアメリカ軍の戦闘機が身を挺して守るという映画「エアフォース・ワン」さながらの熱いシーンがありますが、いかんせんCGが初代プレイステーションレベルなので感動は薄いです。
とはいえ、もしかすると、マイケル・パレ演じるトニー・ウィルクスは毎回「エアポート」シリーズに登場する狂言回し的な存在かもしれないと考えて、念のため「エアポート2021」を観ることにしました。あくまでも念のためです。
トンデモ作戦でテロを止めようとする航空機アクション映画
「エアポート2021」を鑑賞しました。アサイラム製作、アルバトロス・フィルム配給の映画に詳しい皆さんならすでにお気づきのことと思いますが、「エアポート2021」は「エアポート2022 ザ・トップガンナー」の前作ではありませんでした。
僕もあえてそれを理解した上で、「エアポート2021」を鑑賞しましたが、アルバトロス・フィルムを運営するニューセレクトが航空機映画に「エアポート」と日本語タイトルを付けがちという期待を裏切りませんでした。
「エアポート2022」でショボいCGの洗礼を受けていたので、「またあれを見せられるのか…」という気持ちでしたが、「エアポート2021」は見るに耐えうるクオリティのCGでした。
「エアポート2021」の内容を簡単に説明すると、映画はハッカー集団「ニクト」が開発した「ニクトウィルス(NIKTO VIRUS)」が、いとも簡単にアメリカ軍のシステムに感染して、民間航空機に影響はないものの戦闘機は制御不能というシーンから始まります。
そして、それと時を同じくしてラガーディア空港に駐機していた「デカルト航空66便」が2名のテロリストによって乗っ取られます。
前述の通り戦闘機は制御不能なため対応できませんが、乗っ取られた航空機には2名のテロリストしか乗っていないためミサイルであっさり撃墜できると思いきや、このコンピュータウィルスは、標的捕捉システムにもしっかりと感染しており、ミサイルによる迎撃もできません。
しかも、乗っ取られた航空機はカルバート・クリフス原子力発電所に向かっていると判明して、さてどうするとなったタイミングで、乗っ取られた航空機の近くを飛行中で、パイロットが湾岸戦争の従軍経験があり、しかも航空警察官が搭乗しているという理由で「サークルスター117便」に白羽の矢が立つという、原題の「Airliner Sky Battle」を体現する怒涛の展開でした。
しかし、搭乗していた航空警察官はトニー・ウィルクスではなく、レイ・ロリンズでした。まぁ、分かってはいたんですけどね…
ここまでの説明で、特にツッコむ必要もないとは思いますが、あえてツッコんでおくなら、
- 管制塔が「デカルト航空66便」に呼びかける際に「デルタロメオフォックストロット66便」と無意味なフォネティックコードを使っている
- アメリカ軍が発射したロケットランチャーが乗っ取られた航空機(ボーイング747)に当たらない
- 航空警察官の提案で操縦同期システムなる仕組みで強制着陸を試みるも、テロリスト側が飛行中に航空機のシステムを再起動するというトンデモ作戦で失敗
- 飛行中の航空機の非常扉を開けて、サービスカートに飲み物を詰め込んで非常口から落として当てる(命綱はしていない)
- 飛行中の航空機の非常扉を開けて、乗っ取られた航空機に飛び移る(命綱はしていない)
と、こんな感じでした。
ただ、作中でメイリー・リュウ博士を演じるアジア系の女性の俳優を何処かで見たことがあるような不思議な感覚がずっとありました。鑑賞後に調べてみたら、僕が好きでDVDも持っていた「ワイルド・ワイルド・ウエスト」「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」に出演していたバイ・リンでした。
まさかこんなところで再会するなんて…
最後に
今回、数年ぶりにモックバスターを鑑賞して、昔とは違う感情があることに気が付きました。
それは、学生時代には「くだらねぇ」と笑って観ていたはずなのに、今回は「モックバスター」に対して「他作品への安易な便乗」への不快感というか、何とも言えない感覚が心の何処かにありました。
もしかすると、CGが初代プレイステーションレベルだったり、「F-16」と言いつつ「F/A-18」が登場したり、無意味なフォネティックコードが登場したり、モックバスターやコスト削減はともかくとして「作り手として最低限の辻褄合わせはしてくれ」という思いがあったのかもしれません。
僕もデザイン業に20年以上携わり、自分では無自覚でも創作者や表現者の端くれとして、学生時代にはなかった創作者への敬意や倫理観が芽生えていたのかもしれません。
そうであったとしても、やっぱり、B級映画からしか摂取できない栄養は確かにありました。難しいことは考えずに、これからも「くだらねぇ」と笑いながらB級映画を楽しみたいと思います。
だって、与えられた役を懸命に演じている俳優には何の罪もないのですから…
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