数年前まで、僕の毎年の新年の抱負は「1人でも多くの人と会う」でした。どうせ達成できないだろうと分かった上で目標を設定していましたが、予想通り、毎年、誰かに会うどころか親友にすら会うことなく1年を過ごしていました。
「類は友を呼ぶ」ということわざがあります。この有名なことわざの意味をあえて説明するなら、同じような性格だったり趣味だったり、似た者同士がなんとなく引き寄せ合うことを意味します。
僕を含めて、僕の親友や友人の多くは、ほぼ誰1人、積極的に誰かに会おうとしません。「今、大阪に来てる」「今、山口に来てる」と連絡があっても互いに「え?今どこ?今から行くよ」とはならずに「ゆっくり楽しんで」と返すぐらいの関係性です。
決して仲が悪いとか相手を思いやっていないわけではなく、相手の状況を考慮しすぎるからこそ邪魔をしないようにそのような反応になりがちです。しかし、そんな僕が、ここ数年は友人たちと会う理由を探しています。
誰かと会う理由を探している
多くの方は「誰かと会うのに理由なんか必要ない」と考えるかもしれませんが、僕はどうも何かしらの「理由」がないと誰か会えない性格のようなのです。
在宅の個人事業主は、基本的にほぼ毎日を自宅で過ごしています。
仕事中の感覚は「オン」の状態ですが、会社などの社交の場で働いているわけではないため、外での僕を演じる必要がないため、「オフ」の状態であるともいえます。
しかし、それは会社員の方の会社から1歩出た瞬間に感じ取る「オフ」とは感覚が少し異なります。感覚的な部分が多くなかなか言葉での説明が難しいのですが、いうなれば「オンとオフが入り混じったような状態」で日々を過ごしています。
僕にとって、この状態から社交の場に出るためにエンジンをフル回転させることは、皆さんが考える以上のエネルギーを消費します。
だからこそ、僕の性格も相まって、友人に会いに行くための「理由」という可燃性の高い燃料が必要なんだと感じています。
そこで、出会うための「理由」として、飲み会や勉強会は比較的簡単に思いつきますが、これらはすぐに実行できそうなようで、実際は想像以上に準備が大変です。
飲み会の何が大変なのか
飲み会は、お酒を飲むため公共交通機関の利用が前提になります。しかし、山口県は車社会のため、出勤で自家用車を利用する可能性が高く、平日の夜に集まるというのは難しい場合があります。
そうなると、週末に集まるしかありませんが、「在宅の個人事業主は外出に気合がいる」でも触れたように、僕は週末は家族での予定が入ることが多く、また、友人の仕事が必ずしも週末が休みとは限りません。
そんないくつかの問題をくぐり抜けて、飲み会の開催にこぎつけたとしても、山口県の公共交通機関の最終時刻が早いという問題があります。
もし、新山口駅周辺で飲み会をするとなると、一部の路線を除き、山陽本線を含め、多くの路線は22時台に最終列車の発車時刻を迎えます。
そのため、あれこれ考えた挙句、飲み会は諦めて「早い時間に集まってバーベキューをしよう」となりがちですが、今度は誰がバーベキュー用品を持っているのか、誰が食材を用意するのか、場所はどこにするのかを決めなきゃいけません。
あれやこれやと調整していると次第に面倒くさくなり、手ぶらでバーベキューが楽しめる施設を探し始めます。山口県内にもそんな施設がいくつかありますが、それなりのお値段になり、また、個別にそこまで行くのか、どこかで集まって同乗していくのかと悩み始めます。
そんなことを考えていると、次第に「そもそも、集まらなくて良くない?」となりがちです。
弁当でも買って黙って公園で食ってろ
「さっきから聞いていたら!できないことばかり考えるやつだな!」と怒られそうですが、会うことが目的なら、道の駅でお弁当を買って、ピクニックがてら公園で食べるのでも良いとは思うのです。
しかし、数人のおじさんがせっかく各々の時間を調整して会う時間を作ったのに、公園でお弁当を食べるだけなんて侘しくないか?―そんなことを気にし始めたりします。
おじさんになると、すぐに通報されかねないので、何かと世間の目が気になり始めます。自分でも「弁当でも買って黙って家で食ってろ!」と感じています。
飲み会がダメなら勉強会だ
お酒は夜に飲んだほうが美味しいと思っている僕にとって飲み会は夜にするものですが、子供が小さかった頃は夜に外出するのは難しかったため、「明るい時間帯に集まるなら勉強会だ!」と勉強会の開催を検討したことがありました。
偶然にも僕が子育てを始めた2010年前後は各SNSが過渡期から成長期に入るタイミングだったこともあり、全国でSNSを通じて人が集まり、楽しそうにしている様子が可視化されていました。
「飲み会とか勉強会とか」でも触れましたが、僕もそんな空気に呑まれ、勉強会の真似事のようなものを何回かやってみたことがあります。
勉強会は飲み会と異なり、見知らぬ方の参加が期待できます。これにより、関西から山口県に移住した僕にとって、山口県で友達を見つけ出す可能性も期待していました。
勉強会を明るい時間帯に開催すれば、飲み会に比べてスケジュールの調整や移動は比較的容易ですが、実際には飲み会以上の準備が必要でした。
まず、参加者が最低でも十数人は入れる場所の確保、勉強会の内容やワークショップの検討、勉強会後の食事の準備などなど、やる事は多岐にわたりました。
また、山口県はかなり広く、県内在住でも開催場所によっては2時間近い移動が伴う参加者もいるため、「来てよかった」と思ってもらえる内容にしなくてはいけないというプレッシャーが常にありました。
そして、実際に何度かの勉強会をやってみて感じたことは、参加者の顔ぶれが次第に変わらなくなるということでした。
当時のSNSの熱狂は凄まじく、SNSで勉強会を呼びかければすぐに数人程度が集まるという感じでしたが、地方都市や田舎の宿命なのか、参加者が毎回同じ顔ぶれになることもしばしばでした。
参加者が固定化すると次第に緊張感が薄れ、場の空気がなあなあになります。その結果、ワークショップへの取り組みがいい加減になっているように感じることがありました。そんなこともあり、次第に勉強会から気持ちが離れていったように感じています。
もしかすると、勉強会のテーマも良くなかったのかもしれません。勉強会は主にWebサイトやWebサービスの話が中心になっていましたが、もっと幅広い分野でやるべきだったのかもしれません。
しかし、テーマの幅が広くなると参加しやすくなる一方で、専門性が薄まるという懸念がありました。
「もくもく会」や「ビブリオバトル」など、誰でも参加しやすいテーマで始めたほうが良かったのかもしれませんが、移動の大変さと参加者の絶対数を考えると、いずれにしても顔ぶれが変わらないという問題にぶつかっていたと考えています。
コロナ禍以降、数年ぶりに大阪に行った
少し本題から逸れますが、コロナ禍以降、度重なる自粛によって外出自体が億劫になり、なかなか遠出をする気にはなれませんでした。
しかし、数年ぶりに仕事で大阪に行くことになり、久しぶりに新幹線に乗れることに、想像以上にワクワクしていました。その一方で、コロナ禍によってみどりの窓口の対面業務が縮小し、新幹線の切符の購入方法が大きく変化をしていることには薄々気がついていました。
「ADHDと共に過ごしている」でも触れていますが、僕はATMや券売機の操作が得意ではなく、事前の練習もなしに、みどりの券売機なんてとても使えそうにもありませんでした。
そのため、大阪への移動は、いつかやらなきゃと考えたまま放置していた、新幹線のチケットレス乗車に重い腰を上げて挑戦することにしました。
正直、調査や準備はそれなりに面倒でしたが、チケットレス乗車の設定が完了したことで、今後の新幹線での移動は、みどりの窓口で切符を買っていた頃よりも気軽になったと感じています。
それはさておき、大阪では当初、半日はかかると想定していた作業が2時間程度で完了してしまい、帰路につくまでに、予定していた以上に時間が余ってしまいました。
なんとなく一緒に移動することになった
作業が終わったのが午前中で、帰りの新幹線に乗るには早すぎると感じて、仕事の邪魔にならないように5分、10分ぐらいなら会えないかなと考えて、なんとなく親友に電話をしました。
親友はフレックス制なのか午後から出社するとのことで、想定より少しゆっくりと会えることになりましたが、何をするか、どこに行くかは何もなく、とりあえず緑橋駅で落ち合うことになり、そこから予定を考えることになりました。
緑橋駅で落ち合い、数年ぶりに顔を合わせた親友は確実におじさんになっていました。
僕は考えるふりをしていただけですが、おじさん2人で数分間悩んだ結果、親友からの提案は、緑橋駅から鴫野駅まで歩き、鴫野駅のホームのカーブを楽しんだ後、2019年に全線開業したおおさか東線で大阪駅に向かい、2023年に開業した大阪駅の地下ホームを眺めるというものでした。
考えるふりをしていた僕は「それいいやん」とそっくりそのまま親友の提案に乗っかることにしました。
そして、鴫野駅のカーブを楽しみ、大阪駅に到着後はうめきた公園を少し眺め、大阪メトロ四つ橋線に乗り、靭公園で「初めての自転車」という独特の彫刻を2人で眺め「よく分からんね」「うん、よく分からん」と感想を述べ合い、程なく「ほなまた」と言い合って別れました。
傍から見れば「数年ぶりに会った友人と何をやっているんだ?」と思われるかもしれませんが、僕らにはこれが丁度良い感じの距離感のようで、この移動だけのやり取りが、僕には「ものすごく楽しかった」記憶として残っています。
2人でくだらない話をしながら歩いただけでも楽しかったと感じるなら、多分、親友を含めて友人と会うのに、理由なんて必要ないのだろうと思います。
会う理由なんて必要なかったのかもしれない
少し話は逸れますが、僕は予定時刻までの時間潰しのためにカフェに入ったとしても、コーヒーを飲み終わると「コーヒーが飲み終わったのでここにいる必要がない」と感じて、カフェを出てしまうことがあります。
これと同じことが、人との出会いでも起きているように感じています。
誰かと会う「理由」のための飲み会や勉強会だったはずが、飲み会や勉強会が終了した時点で余韻を楽しまずに帰ろうとするのは、「(飲み会や勉強会が)終わったのでもうここにいる必要がない」という考えによるものだったように感じています。
つまり、僕にとって本当に必要だったものは「会う」ための理由ではなく、「何かをするわけではなく会うためだけに集まっている」という理由だったのかもしれないと気がつきつつあります。
「あらゆるものが説明的になっていく」でも触れましたが、Googleで検索をした際に予測入力候補に「ネタバレ」「ひどい」と表示されるのは、何かと忙しい現代人が無意識に「見なくて良い理由」を探しているためではないかと考えています。
きっと、僕は会う理由を探すことで、「みんな、忙しそうだから会っても迷惑になりそうだ」と、無意識に会わなくて良い理由を探していたのかもしれません。
それでも理由があったほうが会いやすい場合もある
とはいえ、大人が集まることに何かしらの理由があったほうが集まりやすいのもまた事実です。理由があれば外出する理由を家族に説明できます。
そこで、飲み会ほど気軽ではなく、勉強会よりも大変ではなさそうな範囲で考えた結果、現在、友人たちに「大人の社会見学」を提案しています。
例えば、山口県には錦帯橋、毛利庭園、赤間神宮、萩反射炉、松陰神社、海響館、唐戸市場など様々な観光地があります。しかし、県内の観光地ということで「行ったことがない」という観光地も多くあります。下手すると死ぬまでに行かないかもしれません。
そこで「大人の社会見学」という、なんともそれっぽい「理由」を持たせることで、少しは集まりやすくなり、また、地元の観光地の良さを再発見することにもつながる可能性が期待できます。
最後に
突然ですが、関西には「サンミー」というクリームをサンドし、チョコと砂糖でコーティングした菓子パンがあります。サンミーの存在すら知らない方も多くいると思いますが、それもそのはずで、サンミーは関西圏でしか販売されておらず、「関西人のソウルパン」とも言われています。
そんな僕には「山口県萩市三見でサンミーを食べる」というとてつもなくくだらない夢があります。しかし、このとてつもなく「くだらない夢」を実現するためには、越えなくてはいけない、いくつかの壁が存在します。
まず、サンミーは関西圏でしか購入できず、また商品の性質上、賞味期限は長くても3日程度だろうと思います。そして、自宅から山口県萩市三見までそれなりの距離があります。
つまり、この夢を実行するためには、
1.関西に行きサンミーを購入する
2.帰宅後、大急ぎで山口県萩市三見に向かう
3.山口県萩市三見でサンミーを食べる
という、情熱だけでは超えられない壁だらけなのに、やっていることがあまりにもくだらなさすぎて、なかなか実行のための情熱が芽生えず、いまだに実行できていません。
そこで、色々な意味で1人で実行するにはあまりにもくだらないこの夢の実現のため、山口県でできた友人たちを巻き込んでみようかと密かに思案中です。










