日々のWebサイトの制作では、同じようなレイアウトが続くと単調になるため、視覚的な変化をつけるために、赤色や黄色など、暖色系のボタンを配置することがあります。

ボタンの色が暖色系であることに、深い意味はありません。Webサイトの色味が青色なら赤色のボタン、Webサイトの色味が赤色なら青色のボタン、そんな感じの決め方です。

あえて理由を挙げるなら、僕が個人的な好みとして赤色や黄色が好きなことと、JIS(日本産業規格)では重要な安全色として赤色は「禁止」「停止」、黄色は「注意」「警告」を示しているため「暖色のほうが目立つだろう」程度のものです。

しかし、そういう無意識の選択に、理由を求められる場合があります。

どんなことにも理由が求められる

デザイン案の確認作業の際に、暖色系のボタンを見た代理店の担当者さんやクライアントさんから「ここに目立つ色のお問い合わせボタンがあるとコンバージョン率が上がるわけですね」と仰っていただくことがあります。

冒頭の通り、僕の中では、ボタンの色に何かしらの理由やマーケティング的な深い考えがあるわけではありません。長年の経験則に基づいているとしても、「暖色のほうが視覚的にメリハリがあるだろう」という程度の適当な感覚です。

しかし、そこは本音を言いたいというADHDの衝動性をしっかりと抑え、嘘を言うかもしれないという思いに苛まれつつ、笑顔で「実際に運用してみないとはっきりとはお答えできませんが、そういう可能性が期待できるかもしれません」と答えます。

人間は理由を深読みしようとする傾向がある

この第三者からの「創作者の意図を超えて、受け手が勝手に意味を見出す現象」で思い出すのが、海外の掲示板「Reddit」が発祥とされるネットミーム、「青いカーテン問題(The Blue Curtains)」です。

気になる内容はこうです。

ある作品で、作者が青色のカーテンを描いた理由が、単に「青色が好きだったから」だとしても、教師や評論家はそれを「登場人物の憂鬱な心情と、迫りくる悲劇を暗示している」と、もっともらしく説明してしまうのです。

創作物には作者の個人的な好みの影響がないとは、言い切れません。また、物語全体を通して見ると「青色のカーテン」は何かしらの伏線になっているかもしれません。

しかし、特定の場面だけを見て「登場人物の憂鬱な心情を表現している」と決めつけてしまうのは、僕には少しばかり受け取る側の身勝手さのようなものを感じてしまいます。

制作者にも個人的な好き嫌いがある

冒頭の僕の色の好みの話に戻りますが、僕は子供の頃から赤色や黄色などの暖色系が好きだったようで、その影響もあるのか、僕の屋号の「3050grafix」も赤色と黄色で構成されています。

また、この屋号と長年一緒に過ごすうちに、僕は屋号を分身のように感じ始め、これまで以上に暖色系に愛着を感じるようになったのかもしれません。

その結果、デザイン案を制作する際に強調色(アクセントカラー)として、無意識に暖色系を使いがちになり、それがレイアウトの間に差し込まれるボタンの色に表れている可能性は否定できません。

そして、なにより、僕がデザイン案の制作で無意識にやっている作業の多くは一見、論理的ではないように見えても、20年近くWebサイトを制作してきた経験則が影響しているかもしれません。

ただ、残念なことに、それらの行動の多くを僕は無意識に行っており「意味がある判断」だと認識できないのです。

僕の感じている青色のカーテン問題

ここで、僕が感じている「青色のカーテン問題」をもう少し自分の過去から探ってみることにします。

あれこれ探ってみると、僕は子供の頃から「作者の意図を知らない自分が勝手に意図を探ろうとするのは作品への冒涜かもしれない」と感じているような感覚があることに気がつきました。

そして、この考え方は、僕の内面だけではなく、周囲に対しても影響しているようです。

それによって、評論家などの第三者が、創作者の意図を超えて作品について語り始めることに強い違和感を感じているのかもしれません。

しかし、ここまであれこれ考えてみて、なんとなくですが、雑貨を作り始めて以降、この考え方が少しだけ変化しているかもと気がついた部分があります。

僕のデザインが僕から離れていく

それは、雑貨を購入者に手渡した時点で、僕が生み出したデザインが僕から離れていくように感じていることがきっかけになっているような気がします。

これまで、Webサイトという手に持てない無形制作物を作り続けていますが、納品後、僕の手を離れたとしても、数年おきに更新作業が依頼される場合があります。

それにより、僕の作った創作物が僕の管理下を離れたようで、どことなく僕の管理下として緩く繋がっている感覚がありました。もう少し細かく言うと、Webサイトがリニューアルされるまでは、更新作業は僕に依頼があるだろうというような感覚です。

その一方で、雑貨は商品を物理的に購入者に手渡してしまうため、その瞬間に雑貨は完全に僕の管理下を離れてしまいます。その後、購入者が僕の雑貨をネタにどんなことを話しているのか知る由もありません。

自分なりに考えすぎなぐらい考える

僕の手を離れた商品が、どんな影響を与えているか分からなくなった以上、製造者責任というわけでもありませんが、雑貨をデザインする際にあれこれと考えるようになりました。

ある時、散歩中によく見かける「売り土地」と書かれた看板を模した缶バッジを作ったら面白いかもしれないと考えたことがありました。

それから、毎日のように「売り〇〇」などのネタになりそうな言葉をメモするようになりましたが、ふと、「売り土地」と書かれた缶バッジを付けている方に対して「恋人を探しているの?」と聞く方がいるのではないかという疑問が頭をもたげました。

これは僕の考えすぎかもしれません。

しかし、僕がそういう考えに至った以上、「恋人を探しているの?」と聞かれて、その缶バッジを買ってくれた方が嫌な気持ちになる可能性がゼロではないなら発売するべきではないと商品化を断念しました。

そもそもおもしろ缶バッジではなかった」でも触れましたが、僕の雑貨は断じて「おもしろ雑貨」ではありません。でも、「おもしろ雑貨」だと思って買ってくれた方が、面白くない体験をするのはどうしても避けたいのです。

おやじギャグのような、ダジャレのような言葉遊びのように見えて、一応、僕なりの思いが詰まっています。

ただ、今でこそ、購入後のことを想定したデザインを意識するようになりましたが、雑貨を作り始めた当初は、衝動性だけが原動力でした。

感情を言語化したい感覚がある

雑貨を作り始めた最初の半年は「誰の指示も受けずに自分が好きなデザインだけを作りたい!」という強い衝動が気持ちを牽引していました。

しかし、すぐに「雑貨が売れない」という問題に直面し、次第に「自分のデザインは良くないのではないか?」という負のループに陥り、新作が増えない日々が続くこともありました。

そこから、紆余曲折を経て、初期の衝動性は落ち着き、今はなんとなくもやもやしてうまく言語化できないことや、なにかに対して自分の中で強い矛盾を感じたときに「デザインをしたい!」という気持ちが芽生えるようになりました。

とはいえ、感じていることをそのまま言葉にすると攻撃的になりすぎたり、ただの暴言になりかねないため、デザインというフィルターを介してうやむやにして、もみくちゃにしている感覚です。

しかし、かき回しすぎた結果、自分でも正解が分からなくなることがあります。

僕の雑貨は他者の感想を補完して完成する

毎回、そんな不安を抱えて、イベントに出店して商品を並べていました。そんな気持ちとは裏腹に、イベント出店時にブースに立ち止まってくれた方から「面白いデザインですね」と言われることがあります。

それにより、当初は意識していなかったものの、第三者からの何気ない言葉によって「これは他者から見ても面白いデザインなんだ、大丈夫なんだ」と安心感を感じるようになりました。

以前の僕は、創作者の意図を超えて、第三者に解釈されることに強い拒否感を感じていましたが、これは、Webサイト制作という「受注生産」の環境しか経験していなかったことが大きく影響していたのかもしれません。

しかし、図らずも僕の雑貨は、第三者からの「面白いデザインですね」という言葉によって完成すると判明しました。

長年、Webサイトを作ってきたことで、自分自身を「デザイナー」や「表現者」と思っていた節があったようです。しかし、受注生産のWebサイトと、僕の思考から漏れ出た澱みによって生み出された雑貨とでは雲泥の差がありました。

かつて、第三者からの勝手な解釈を毛嫌いしていた僕が、今では第三者からの解釈を期待しているのだから不思議なものです。

ただ、僕のこの変化は「評論や評価は必要ありません。感想だけお聞かせください」程度のようにも感じるため、三つ子の魂百までというか、人間の業の深さを感じたりもしています。

最後に

とはいえ、きっとこれからも、Webサイトの制作では「このボタンが緑色なのは何か意味があるんですか?」と聞かれ続けると思います。

そして、これからも僕の中では「Webサイトの色が赤色なのでなんとなく緑色にしただけ…」というのが本音だろうけど、それは決して口にせず「ボタンが緑色の場合にクリック率が向上したというデータに基づいています」と、それっぽいことを答えるでしょう。

一応、言い訳をしておくと、ボタンの色を決める際は、決して適当に考えているわけではありません。

ただ、「緑色だと効果が高い」「赤色だとクリックされやすい」というようなデータに基づいているのではなく、長年の勘というか経験則のようなものと、その時の直感で判断している部分があります。

また、Webサイトの運用は「トライアル&エラー」なので、日々のアクセス状況やサーチコンソールの結果を見ながら、調整していくのですが、クライアントさんの多くは、年に数回しか更新作業を依頼してくれません。

そのため、「コンバージョン率が上がるわけですね」と聞かれても、嘘は良くないと「そうです!そうです!」ではなく「やってみないと分かりません」としか答えられません。

しかし、それは依頼者が求めている答えではないのでしょう。でも、嘘はつけません。

ただ、雑貨を作り始めたことをきっかけに、ほんの少しだけ「第三者の解釈を受け入れる余地が生まれた」かもしれない僕にとって、これまで、それっぽいことを言うたびに感じていた罪悪感が少しだけ薄まるとしたら…

「やってみないと分かりません」ではなく、「それです!それです!そういうのが期待できます!」と言うようになるかもしれません。この先、ADHDに由来するこの強いこだわりが、ちょっとだけ緩んだ未来が期待できそうです。

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3050grafix

2004年よりWebサイト制作に携わり、2010年から山口県山口市で、Webサイトの制作や更新を専門とする個人事業主として制作業務を行なっております。

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