僕は2004年に小さなWebサイト制作事務所に就職して、2009年に山口県に引っ越し後の2010年からWebサイトの制作を専門に行う個人事業主になり、今年で15年目を迎えます。
そんな僕がふとした思い付きで、2019年に缶バッジやシール、トートバッグなどの雑貨を作り始め、現在では、缶バッジやシール、トートバッグなど100点を超える雑貨をイベントやオンラインショップで販売しています。
雑貨作りを始めたきっかけ
僕はデザインを考えることが好きですが、僕の仕事は、依頼があってデザインを考えることが前提になっており、自発的にデザイン制作をすることはあまり多くありません。ただ、自分が好きなデザインが作れるわけでもありません。
雑貨づくりを始めたきっかけは幾つかの要因が複合的に絡み合った結果ですが、「自分の好きなデザインを作りたい!」との思いが、要因の1つにあったように感じています。
仕事でデザインを制作中に「こんなデザインを作ってみたい」と思い浮かぶことがあり、その都度、メモアプリにアイディアの断片を残していました。それが僕の雑貨作りのアイディアの源泉になっています。
10年分のメモがあった
メモを積極的に残している時期もあれば、全く残していなかった時期もあり、大量のアイディアのメモがあったわけではありませんが、それでも僕の中から漏れ出た思いがメモには残されていました。
中には「烏賊Summer」「年始に念視」のように自分でもよく分からないメモもたくさんありましたが、ここからさらにアイディアを掘り下げたり、掘り下げられなかったりしながら、雑貨作りをしています。
地元のハンドメイドイベントに出店をしてみた
僕が雑貨作りを始めたきっかけは「自分の好きなデザインを作りたい!」だったので販売する気はありませんでしたが、妻の発案で布小物やアクセサリーのハンドメイド作家さんが出店している地元のハンドメイドイベントに出店することになりました。
妻は「ここでしか手に入らないオリジナル雑貨!」と書かれたポップを作ってくれましたが、「無名の僕が作った雑貨なんか本当に売れるのか?」としか思えず不安しかありませんでした。しかし、僕の不安な予想に反して、数個の缶バッジが売れました。
金額にすると1,000円程度でしたが、無名の僕が作ったものでも、誰かにとってお金を出す価値があると思ってもらえたことに加えて、お客さんが会話をしながら缶バッジを選ぶ様子を見たことで、これまでの仕事では感じたことがない体験になりました。
そしてコロナ禍に襲われた
地元のハンドメイドイベントに出店して事で手応えを感じて、様々なデザインフェスなどにも積極的に参加しようと準備をしていた矢先にコロナ禍がやってきました。
そして、突如、大半の制作案件が止まりました。
個人事業主として、依頼に対して真摯に取り組んでいればやっていけるはず、と考えて10年以上やってきましたが、案件の相談や制作が完全に止まったのは、この時が初めてでした。
僕の仕事に関わる多くの方々が「これからどうなるんだろう」「テレワークってなんだろう」「感染したら死んでしまうんだろうか」と戸惑っているように感じましたが、それは僕も同じでした。
そして、制作案件が停止したのとほぼ同時に、申し込んでいたハンドメイドイベントやデザインフェスの大半は、状況を様子見するための無期限延期か中止になりました。また、政府や自治体から都道府県間の移動自粛要請もあったことで、本当に何もすることがなくなりました。
緊急事態宣言が発出されて以降は制作案件が止まりました。クライアントさんも代理店さんも、状況に対する混乱やテレワークの対応などに追われ、通常業務もままならなかったのではないかと感じています。
ただ、人間とはなかなか複雑で、忙しいときは休暇を欲しているのに、暇になると忙しさを欲するようで、迷惑メールしか受信しないメールアプリや、何の通知音も鳴らないチャットアプリを眺めて過ごしていました。
日々のやることがなくが突如としてなくなりましたが、これまでは制作作業に追われ、待ちに待った暇な時間なのに、人間とはなかなか複雑で、忙しいときは休暇を欲しているのに、暇になると忙しさを欲するようで、「頼むから仕事をさせてくれ!」と思ったのはこの時が初めてかもしれません。
本当にやることがなかった
僕が長時間労働を肯定していないことに留意していただきたいのですが、そうであっても、僕は固定収入がない個人事業主という立場ゆえか、ADHDの多動などの特性のためか、作業が切れ目なく続く状態のような忙しさの方が心が安定しているように感じています。
偶然とはいえ、コロナ禍の少し前からたまたま雑貨作りを始めていたことで、緊急事態宣言の発出後は「コロナ禍で仕事はどうなるんだろう」「感染したら死ぬんだろうか」と次から次に湧いて出る不安を打ち消すかのように、雑貨のデザイン制作に没頭していました。
また、僕の仕事はどうしても1日の大半を座って過ごす運動不足な生活になりがちなため、現在は1日1時間以上「リングフィットアドベンチャー」で遊んでいますが、コロナ禍以前から「出社」と称して仕事前に毎朝約8kmのウォーキングをしていました。
雑貨のデザイン制作で、わざと自分を忙しい環境に追い込み、毎朝のウォーキングを継続することでコロナ禍中も日々のルーティンを維持できたことで、ギリギリのところで心の安定が維持できていたように感じています。
2024年中頃から雑貨のデザインを考えなくなった
それまでせっせと日常的に思い付いたアイディアのメモを書き、仕事の合間に雑貨のデザイン制作をしていたのに、2024年中頃から急に何も浮かばなくなりました。
当初はスランプの一種かもしれないと悩みましたが、日々の仕事としてのデザイン制作は問題なく行えていたため不思議に感じていましたが、最近になってなんとなく見えてきた気がします。
作りたい欲求が落ち着いた
現在では、缶バッジやシール、トートバッグなど100点を超える雑貨を販売していますが、長年「こんなデザインなら面白いはず!」と考えていたものは、ほぼ作った気がします。
また、10年近く書き残したアイディアのメモもほぼ使い尽くし、温め続けたアイディアから作りたかったものを形にし、ある種の充足感に満たされ、何も浮かばない状態になっているのかもしれません。
新作がなくても売れるようになった
商品数は100点程度ですが、2019年からの数年間で300点近いデザインを考えて、デザインの制作中に「これは売れない…」と断念したり「もしかしたら売れるかもしれない!」と製品化をして売れないまま店頭から消えた商品もたくさんあります。
また、現時点で売れている商品の中には、雑貨作りを始めた初期の頃に販売している商品も多く、定期的に新作を投入しなくても何とかなる状態になっています。これにより「新作を作らなきゃ!」という切迫感が減少したのかもしれません。
雑貨のデザイン制作に飽きた
単純に雑貨のデザイン制作に飽きた可能性が考えられます。2025年時点でも、世の中は2020年に始まったコロナ禍の延長線上にいると感じていますが、2023年頃から世間はコロナ禍以前に戻ろうと動き始めたことで、仕事の制作環境が戻りつつあります。
それにより、雑貨のことを考える時間が減り、雑貨への興味が薄れた可能性が考えられます。
雑貨作りを始めたことでデザインへの感覚に変化が生まれた
仕事のデザイン制作のために定額制の素材ダウンロードサービスを利用しています。2019年の雑貨を作り始める以前は、「Adobe Illustrator」を起動するのがどうしても好きになれず、素材をダウロードした際にのみ起動していました。
また、ダウンロードした素材の作られ方や線の太さが気に入らないと、似たような素材を探し直すなど、可能な限り自分で素材は作らないことを徹底していました。
Illustratorの起動を極度に嫌がったり、素材は作らないと考えるのは、それらの作業は「Webサイトのデザインとは異なる」と考えるADHDのこだわりのようなものだったのかもしれません。
しかし、雑貨作りのため、毎日のようにIllustratorを触っていたことで、それまで知らなかったさまざまな機能が使えるようになっていました。
そのことで、ダウンロードした素材が気に入らない場合、アイコンやピクトグラムのような素材であれば「自分で作ったほうが早い」と考えるようになり、アイコンの制作をする機会が増えました。
アイコンなどの素材作りをするようになったことで「好きなものを作りたい!」との気持ちに満たされ、雑貨作りへの情熱が減退したのかもしれません。
完成を決断することへの苦痛
僕のデザインへの行動動機はあくまでも依頼によって生まれるため、自発的なデザインの制作は「これで完成」との判断を自分でする必要があります。
このことが、完成を避ける傾向にあるADHDの僕にとって、ある種のストレスに感じていたのかもしれません。
様々な要因はあるものの…
きっと「雑貨づくりは自分の仕事だ!」と思いこむことで、雑貨のデザイン制作は継続できたと思います。
ただ、無理をして考え続けることで、飽きる以上に、デザインを考えることが嫌いになってしまうことへの恐怖が強かったため「考えたくなるまで待っていよう」と待ち続けていたら、1年近く新作をほとんど作らない日々を過ごしていました。
でもコロナ禍前と何が違った
2024年の秋ぐらいから仕事量がコロナ禍前の感覚に戻りつつあるように感じます。ただ、自分の中でまだうまく言語化できていませんが、忙しさが続かなくなったというか、コロナ禍前に比べて何かが大きく変わってた雰囲気を感じています。
SNSの利用の促進により、Webサイトからの情報発信の重要性が低下したのか、ノーコードでWebサイトを制作できるサービスが増えたことで、制作事務所に依頼する必要がなくなったのか、理由は様々ですが
ただ、僕も40代半ばになり、世間的に面倒なことを言い出すおじさんの仲間入りを果たしたことで、僕に対する需要が減っているだけの可能性も否定できませんが…
そろそろ作ろうと思うようになった
2024年中頃から「新作を作ろう」と思わなくなったからといって、作っていかなったわけではなく、ある程度作っては放置する、ということを繰り返していました。
そして、最近ふと「そろそろ新作を考えなきゃ」という気持ちが自然と浮かぶようになってきました。
そろそろ何かを作ってみようと思います。そのためにまず、ある程度作り放置したままのデザイン案を完成させようと感じています。
無理をせず、そして焦らずに…