僕を含めて4人だけのLINEグループがあります。僕以外のメンバーは、僕が山口県に引っ越した後にできた友人たちです。建設的な話や創造性のある話は全くしません。

どちらかというと、在宅の個人事業主の僕が延々となにかを言い続けて、会社員の友人たちが終業後にスクロールをしても追いきれない僕の脳から漏れ出した澱みを見せられているような、そんな4人です。

でもそんな彼らは、僕がいつの日か山口県萩市三見で関西のソウルパン「サンミー」を共に食べようと考えている選ばれしメンバーたちです。そんなLINEグループである日、僕の何気ないひと言から不思議なコミュニケーションが生まれました。

共通の知人がきっかけだった

そんな4人には共通の知人がいます。仮にその方の名前を「山田さん」とします。気の良い素敵なご老体で、僕が食後の散歩をしているとそれなりの頻度で遭遇します。

この「不思議な言葉」が生まれたきっかけは、2025年2月に山口県山口市阿知須で開催された「ひなもんまつり」で来場者に駐車場の場所を説明するお手伝いをしていた時だった気がします。

ただ、僕ら4人の中では、常に不思議な言葉が生まれる傾向があるため、今回のブログで取り上げる「不思議な言葉」の誕生は、実はもっと前だったかもしれません。

なんでもかんでもADHDに罪をなすりつけるのは良くないですが、「ADHDと共に生きていくとはどういう状態なのか」でも触れたように、僕は自責の念をADHDに押し付けて生きているので、そこら辺の曖昧さはご容赦ください。

駐車場の警備や車の誘導のために、祭りの会場内であっちこっちに移動している際に、たまたま、祭りを見に来ていた山田さんと4回遭遇しました。

「今日の駐車場の警備中に山田さんと4回も遭遇した!」とLINEグループに書き込もうと思ったのですが、当日は気温が寒く、雪もちらついており、手袋を外すのが億劫でした。

そこで、右手の手袋を外して「今日は4山田でした。明日は7山田を目指します」と手短にLINEグループに書き込み、すぐに手袋をはめました。

実際には、次の日も何度か山田さんに遭遇しましたが、5山田ぐらいで、7山田は目指せなかったような気がします。ただ、そのときは他愛もない、いつものいい加減なやり取りという感覚でした。

友人たちも使い始めた

それからしばらくが経過した頃から、友人たちから、頻繁に「4山田」「2田中」「1鈴木」「1佐藤」のような書き込みが、LINEグループにありました。ある種、仲間内だけで流行るネットミームのような印象でした。

ネットミームとは

ネットミームとは、インターネット上で人から人へと模倣、拡散される画像や動画、文章、または、それらが拡散されていく現象を意味します。基本的には共感や面白さを含み、急速に広まるのが特徴です。

ネットミームは2000年頃には存在しており、その頃のネットミームは政治や民族的な要素が含まれ、今で言うところのセンシティブなものが比較的多いような印象がありました。

現在では、生成AIによってもたらされた「クリエイティブの民主化」は、実際は「クリエイティブのファーストフード化」に近く、誰でもたった数秒で画像が生成できるようになり、ネットミームの誕生から終息までの消費期限が短くなっています。

そのため、「代表的なネットミームにはこんなものがある」と参考例を挙げにくいのですが、宇宙を背景に猫を合成した「宇宙猫(スペースキャット)」や「5000兆円欲しい」などが挙げられます。

2025年には、メンフクロウのヒナが一生懸命走る様子の写真が「エッホエッホ」という言葉とともに、ネットミームとして話題になりました。

ただ、日々、LINEグループに書き込まれ続けた「4山田」「2田中」「1鈴木」「1佐藤」は、次第に仲間内のネットミームではなく、「ファミレクト(家族言語)」のように変化していったように感じています。

ファミレクトとしての意味合い

ファミレクト(Familect)とは、家族を意味する「Family」と、方言を意味する「Dialect」を組み合わせた造語で、「特定の家族内や仲間内だけでしか通じない言い回し」を指す言葉です。

日本語では、「家族言語」や「結婚言語」などとも訳されますが、このブログでは「家族語」と表現します。

我が家に、今も残る家族語として「牛乳かけるやつ」があります。これは、子供が幼少期にシリアルのことを「牛乳かけるやつ」と言い始めたことがきっかけで家族内で使われ始めました。

それから十数年が経過しても、どう考えてもシリアルの方が文字数が少ないのに、今でも「牛乳かけるやつ」と呼ばれ続けています。ただ、最近、長男は時折「シリアル」と言うようになった気がします。

ただ、いくら気心が知れた仲間内であっても、ネットミームや家族語だけでは、「4山田」がここまで盛り上がるだけの魅力は持っていないように感じます。しかし、僕が何気なく発した「明日は7山田を目指します」が、大きな鍵になっているような気がしています。

無意識のゲーム化

あらゆるものが数値化されていく」でも触れましたが、僕は無意識に日常的な物事や行動を、無意識に数値化やゲーム化して、その後の行動動機に繋げているような感覚があるようです。

「明日は7山田を目指します」が、友人たちの「それなら!俺は8山田だ!」という気持ちを刺激して、結果として、「山田さんに会った回数」を競い合うゲームのようになっていたのかもしれません。

その結果、本来、山田さんとは散歩をしているとそれなりの頻度で遭遇するはずだったのに、散歩中に、つい山田さんが歩いていないか探してしまうような行動をしていたような気がします。

この無意識のゲーミフィケーション(Gamification)は、その後、さらに広がりを見せて、LINEグループでは「車を運転中の山田さんに声をかけられるの実績解除」みたいな報告も飛び交うようになった時期がありました。

ただ、4人のなかで「車を運転中の山田さんに声をかけられる実績解除」のような、どうとでも広げられる要素にはあまり面白みを感じなかったのか、「4山田」ほどの盛り上がりは起きず、すぐに終息しました。

今では日々の挨拶のような感じになっている

祭りの日に、寒くて手袋を長時間外すのが嫌だった僕が何気なく呟いた「4山田」には、「今日だけでたまたま山田さんに4回も遭遇するとか、多すぎじゃない?」という思いが情報として圧縮されていました。

今でも「1山田」「3山田」と「今日も山田さんに会っちゃったよ」という報告のやり取りは続いていますが、それに加えて今では、散歩中の僕をどこからか見かけた友人が「1ヒロ」とLINEグループで報告をする、日々の挨拶のような使い方に変化しつつあります。

「家族語」や「ハイコンテクストな方言」だった表現がネットミームのような変異性を持ち、「4回とか会いすぎじゃない?」という意味から、「さっき偶然見かけたよ」を意味する表現に変わりつつあります。

本来の意味での「ミーム」という言葉を提唱した生物学者のリチャード・ドーキンスの言葉を借りるなら「数字 + 名前」の組み合わせは、模倣性や変異性が高く、容易に応用できます。

また、「4山田ってなに?どういう意味?」と言わずに、僕の意図を瞬時に理解し、面白がって利用してくれる友人たちによって伝播され、今も4人の中で通じる言葉になったように感じています。

そして、今年も「4山田」が生まれたあの場所に戻る季節がやってきました。そうです、「ひなもんまつり」です。

「ひなもんまつり」がやってきました

2026年2月5日から2月9日にかけて、山口県山口市阿知須では「ひなもんまつり」が開催されました。もちろん、2025年と同じように、在宅の個人事業主の僕は本業そっちのけで、土地勘のない来場者にイベント会場周辺に点在する駐車場の場所を説明するお手伝いに明け暮れた5日間でした。

傍から見ると誘導棒をライトセーバーのように振り回しているだけのようにしか見えなかったかもしれませんが、僕は​この5日間、あの日達成できなかった「7山田」を超えるべく、静かな闘志を燃やしていました。

そして、結果はというと「7山田」どころか、ひなもんまつりの開催中、僕は山田さんに会うことができませんでした。まさかの「0山田」でした。

最後に

ただ、僕には「7山田」とは別に、もう1つ、密かに温めていた目的がありました。それは、駐車場の場所を全ての来場者に間違いなく伝えるか、ということでした。

2025年の「ひなもんまつり」では駐車場の説明の際に、「橋の手前を左折してください」と伝えると何台かの車が橋を渡っていったため、「橋を渡らずに橋の手前を左折してください」と説明することで、間違いを防ぐことができると学んでいました。

そのため、今年もしっかりと「橋を渡らずに橋の手前を左折してください」と説明をしましたが、それでもイベント期間中に3台の車が橋を渡っていってしまいました。

そこで、誘導棒を振り回しながらあれこれ考えた結果、伝え方を「橋の手前の川沿いの道を左に入ってください」に変えてみました。偶然なのか、たまたまなのか、それ以降は橋を渡っていく車はありませんでした。

僕としては、少しでも間違いを減らし、可能な限り手短に伝えているつもりでしたが、土地勘のない来場者からすると、「橋を渡らずに」と「橋の手前を左折」という、同時に2つの動作を伝えることで、逆に混乱を招いていたのかもしれません。

もし、2027年にも開催され、また僕がお手伝いをすることになった場合は、この経験を活かしたいと考えています。

それはそうと、来年こそ、「7山田」の達成と、誰にでも分かりやすい説明を固く決意しつつ、今回も「ひなもんまつり」に多くの方に来場いただいたことに心から感謝申し上げます。

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2004年よりWebサイト制作に携わり、2010年から山口県山口市で、Webサイトの制作や更新を専門とする個人事業主として制作業務を行なっております。

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