ブログのタイトルに「在宅の個人事業主」とありますが、あくまでもこれは僕の個人的な話です。
僕は2010年に在宅の個人事業主になり、かれこれ15年以上、人生の多くの時間を自宅で過ごしています。自宅で過ごしている個人事業主が「出社をする」とはどういうことなのか―順を追って話を進めたいと思います。
個人事業主になったばかりの頃は、周囲からの視線がない中でどうやって「仕事モード」にすれば良いのか悩む時期もありましたが、毎月決まった日に給料が入ってこないという現実がすぐに僕を仕事モードに駆り立ててくれました。
そして、「個人事業主には毎月の給料がない」という現実が、家族に空腹を感じさせてはいけないという責任感に変わり、その結果、個人事業主の試練ともいえる今思うとなかなか凄まじい体験をしました。
個人事業主の強烈な現実を経験する
個人事業主になって最初の1年は制作費用が適正ではなくても、納期が厳しくても、仕事を依頼されることが嬉しくて、なんでもかんでも引き受けていました。
また、仕事のオンオフの概念が希薄になっており、時間や曜日に関係なく常にスマートフォンで仕事のメールを確認してしまう癖がありました。そして、スマートフォンから聞こえるメールの通知音に心を躍らせていました。
しかし、相談される案件は取捨選択せずに引き受け続けた結果、月の労働時間が330時間を超え、ある時から、その状態が半年以上続いていました。
普通の状況なら、月に330時間以上も働くとすぐに心のバランスを壊しそうですが、僕は個人事業主だったことで、制作数が増えれば増えるほど、僕の実績や評価、収入の増加につながり、承認欲求のようなものが維持でき、ギリギリのところで壊れずに持ちこたえていたように感じています。
しかし、この頃から、徐々に心のバランスが崩れ始めたようで、家族に何を言われてもイライラしたり、風邪でもないのに37.5度程度の発熱の症状が出るようになりました。それでも自分のことを気にも留めずに仕事を続けた結果、ある日突然倒れました。
季節の変わり目に喘息の治療でお世話になっている医師に相談したところ、すぐさま、数日程度入院することになりました。
その結果、極度の過労と診断されましたが、心のバランスが崩れつつある中で、心が壊れる前に身体が悲鳴をあげたことで、ギリギリのところで自分の状況を客観視することができたように感じています。
個人事業主は全てが自己責任
在宅の個人事業主は朝食を食べずに仕事を始めたり、パジャマのままでも仕事ができます。特に僕はADHDのため過集中に入ってしまうと、そのまま、昼食も食べずに夕方まで仕事を続けることがありました。
しかし、この経験によって、自分が置かれている状況の異常さを痛感したことで、健康第一を前提に様々なことを見直しました。
在宅の個人事業主なのに出社をする
僕はそれを「出社」と称したルーティンとすることで身体に叩き込むことを実践することにしました。色々と模索した結果、基本的な流れは、
- 朝食を摂る
- 服を着替える
- 8km程度の散歩に行く(約1時間)
- 帰宅後、コーヒーを淹れる
- PCを起動
で、落ち着きました。
「朝食を摂る」「服を着替える」は社交の場に向かうことを意味し、「8kmの散歩に行く」が僕にとっての出社になります。
出社といっても自宅を出て、自宅に戻るだけですが、1日の大半を椅子に座って過ごすことが多く、健康維持と、外出することで仕事モードに切り替える目的がありました。
また、昼食後はすぐに仕事に戻り、昼休憩をする習慣がなかったため、朝のルーティンを始めた数年後に、昼食後に「4km程度の散歩に行く」を追加しました。
ルーティンがもたらした効果
出社という概念がない在宅の個人事業主が、自分なりの働き方改革や健康維持、寝起きから仕事モードに切り替えるために始めた毎朝のルーティンでしたが、思った以上に効果がありました。
僕は2022年に心理検査を受け、ADHDと判明しましたが、それ以前から集中力の維持や過集中などの問題を自覚しており、制作作業を始める前に「コーヒーを淹れる」「ラジオを聴く」「その日の作業内容を紙に書き出す」など自分なりのルーティンをしていましたが、うまくいく日とうまくいかない日がありました。
毎朝、8km程度を約1時間30分程度かけて歩くことによって血の巡りが良くなるのか、帰宅後はこれまでより短時間で制作作業に取り掛かれるようになったような感覚がありました。
また、僕は学生時代から油断をすると夜型の生活リズムになりがちでしたが、散歩中に太陽光を浴びることで、体内時計のリセットや早寝早起きとまではいかなくても、それなりに規則正しい生活が送れていた気がします。
出社ルーティンのリズムが崩れだした
ただ、それまで順調だった毎朝の出社ルーティンが、2016年7月22日に日本でサービスが開始されたポケモンgoによって大きく変化しました。
それまでは、スマートフォンの画面を眺めることなく黙々と歩いていましたが、ポケモンgoの機能追加によってゲーム性が向上するに従って、ポケモンを捕まえるためや、レイドバトルのために立ち止まることが増えました。
何度も散歩中はポケモンgoで遊ばないようにしようと考えましたが、1日1回ポケストップを回したい、ポケモンの飴を増やしたい、図鑑を埋めたいなどの欲求に抗うことができず、1時間程度だった散歩は立ち止まる時間が増え、徐々に仕事の開始時間を圧迫するようになってきました。
お金の力で解決だ!
そこで、ポケモンを捕まえるためやポケストップを回すために立ち止まる時間を減らそうと「Pokémon GO Plus」を購入、利用することで対策することにしました。
「Pokémon GO Plus」の効果は想像以上で、スマートフォンの画面を見ることなく、ひたすら黙々と歩き、ポケモンgoプラスが振動したらボタンを押すを繰り返すだけのこれまでの散歩が戻ってきました。
まさに、問題がお金で解決できた瞬間でした…が、それはすぐに終わりました。ポケモンgoプラスのボタンを押すだけでポケモンがどんどん捕まり、道具がどんどん溜まることで、ポケモンボックスやバッグがすぐに上限に達しました。その都度、立ち止まって整理をしていました。
また!お金の力で解決だ!
だんだん、立ち止まって整理するのも面倒になり、一時期はひたすらポケモンボックスとバッグを上限まで拡張することで対応していましたが、それでもすぐに上限に達していました。
世間のポケモントレーナーは躊躇なくポケモンを博士に送り、道具を捨ててしまうことができるのだろうと思います。
しかし、僕はADHDの「整理ができない」という特性も相まって「このポケモンは可愛いから」「このポケモンはこの辺ではあまり出現しないから」「このポケモンは最初の頃からボックスにいるから」という理由で残しがちになります。特にピカチュウは残しがちです。
次第に整理が面倒になり、星3以上のポケモンの確認も面倒になり、孵化装置には卵が入ったままになりました。
ただ、ポケモンgoには週に50km以上歩くと普段見かけないポケモンが生まれる卵が報酬として貰えるため、それを目当てで歩き続けていましたが、結局、ポケモンボックスが圧迫される問題からは解放されず、次第に散歩を始めた頃のようにただ黙々と歩くだけの日々になりました。
ポケモンホームも溢れつつあった
少し話題から逸れますが、僕はポケモンホームでは有料のプレミアムプランを利用しています。
プレミアムプランでは6000匹までポケモンを預けることができますが、「このポケモンは可愛いから」「このポケモンは隠れ特性だから」「このポケモンは最初の3匹だから」と何かと残しがちです。
この前、上限間近の5800匹を超えたため、心を鬼にして整理をしましたが、現時点で2700匹に迫りつつあり、2025年10月に発売された「Pokémon LEGENDS Z-A」がポケモンホームと連携されたり、「Pokémon Champions」のサービスが開始される頃には、さらに悪化するのは目に見えています。
ところで、現在の出社ルーティンはというと…
ポケモンgoから離れても散歩は惰性で続けていましたが、雨の日は散歩に行くことができず、次第に雨の日が待ち遠しくなるようになったため、マンネリ化の解消を目的に2024年5月から食後の2回の散歩を、毎食後にリングフィットアドベンチャーで遊ぶことに変更しました。
行動の数値化という魔力
「あらゆるものが数値化されていく」でも触れましたが、散歩が10年近く続けるモチベーションが維持できたのは、健康への関心よりもポケモンへの興味と「行動の数値化」が要因だったのではないかと感じています。
日々の散歩の記録は「Google Fit」によって自動的に行われ、また、ポケモンgoとGoogle Fitを連携することで、散歩で歩いた距離がポケモンgoに反映されます。
それに加えて、ポケモンgoでは捕まえたポケモンの数や回したポケストップの数が記録されています。
それによると、2025年10月時点で僕は157000匹以上のポケモンを捕まえ、86000以上のポケストップを回し、14700km以上歩いています。それらの数によって実績解除(アチーブメント)があり、そういう日々の行動の数値化が僕の行動動機に繋がっていたようにも感じています。
サポート終了までのカウントダウン
リングフィットアドベンチャーも日々の運動が記録され、徐々に増えていく走行距離や消費カロリーを眺めることが毎日の取り組みへのモチベーションにつながっていると考えています。
しかしそれと同時に、リングフィットアドベンチャーで遊び始めた頃から、リングフィットアドベンチャーは2019年10月に発売され、2025年10月時点で6年を迎え、任天堂がいつまで運動ログによる世界順位などの表示をサポートしてくれるかという不安がありました。
また、2025年6月5日には、Nintendo Switch 2が発売されたことで、リングフィットアドベンチャーがいつまでプレイできるのか、リングコンやJoy-Conが壊れた場合、いつまで修理や再購入ができるのかなども気になりつつあります。
最後に
そういう意味で、リングフィットアドベンチャーを始めて1年が過ぎたこのタイミングで、リングフィットアドベンチャーのサポート終了やリングコンの販売終了の現実味が増しつつあります。
健康維持のために始めたはずの出社ルーティンは、行動の数値化という魔力に囚われて、企業のサポートがいつ終わるか分からないという不安に晒されています。
そんなことを思いながら、「歩くだけなら行動の数値化も企業のサポートも必要ないはずだ」と散歩を再開することをそれとなく考え始めています。







