一般的な小説ではタイトルから内容や物語が想像しにくい傾向にありますが、以前からライトノベルのタイトルが「異世界転生!チート能力で最強を手にするまで」のように説明的過ぎることが気になっていました。

そんなある時ふと「検索することが常識なった社会では、書籍のタイトルに検索されそうな単語を含めることで検索サイト最適化(SEO)を担っているのではないか?」という考えが思い浮かびました。

検索サイト最適化とは

検索サイト最適化とは、企業やWebサービスなどの運用者が検索サイトの検索結果の上位に表示させるための対策を意味し、「SEO(Search Engine Optimization)」とも呼ばれます。

具体的にはWebサイトの構造や各ページのページタイトルや掲載される単語、内部リンク、外部リンクなどを最適化し、検索エンジンの理解を促すことで、検索サイトからの流入を増やし、Webサイトの認知度やアクセス数を向上させることを目的としています。

ライトノベルのタイトル

つまり、ライトノベルのタイトルに「異世界転生」「チート」「最強」を含めることで、異世界転生や冒険のようなジャンルに興味がある読者への訴求と検索エンジンへの最適化を同時に行っているのではないかと考えられます。

一般的な小説では、読み進めることで徐々にタイトルの意味に気がついたり、文章の行間や機微など叙情的な部分を楽しむ目的がありますが、ライトノベルは爽快性やエンターテイメント性が優先されるため、読者にとって内容が分かりやすいタイトルであることの方が重要なのかもしれません。

なぜ説明的になっていくのか

私たちは日々、大量の文字情報に接していますが、スマートフォンの登場により、目にする文字情報が爆発的に増加したように感じます。また、スマートフォンの登場は文字情報だけではなく、写真や動画、音楽に触れる機会を大幅に増加させました。

毎日のように大量の情報に接していることで、目の前に迫ってくる情報を、しっかりと確認しないまま受け流すことに慣れてしまっているように感じています。そのため、まず目に留めてもらう必要があり「分かりやすさ」「一瞬で理解してもらう」に重点が置かれているのではないでしょうか。

検索性の向上

現在の20年前の情報と最新情報が混在するインターネットでは知らない情報を調べるよりも「単語 ブランド名」のように、調べたい単語に企業やブランド名を組み合わせて調べることが多くなっているのではないかと考えています。

これは、時代の変化とともに現在のインターネットが広報活動をしなくてもWebサイトさえあれば誰かに知ってもらえる可能性があったメディアから、すでにある程度の認知度があったり、メディアミックスによって認知度が向上した商品や企業しか見つけてもらえないメディアに変化していることを示唆しているようにも感じています。

その結果、知りたいことはすぐに検索できるようになった現代では、ターゲット層が検索するであろう単語を想定して、商品名を付ける必要があるため、過去に流行したタイトルのパターンなども踏まえて「異世界転生」「スローライフ」「グルメ」など、どこかで見た事がある単語を並び替えたようなライトノベルが大量生産されている可能性を感じています。

このように、提供側は検索されることを意識してタイトルを付けるようになりましたが、一方で、検索サイトを利用する側の行動もまた、変化しています。特に、日々進化する検索サイトの便利な機能が、その変化を加速させているように感じます。

検索サイトのサジェスト機能

何かを調べようと検索サイトの検索窓に単語を入力すると、自動的に単語の候補が表示されることがあります。これは「サジェスト」と呼ばれる機能で、過去の検索履歴やトレンド、関連性などに基づいて表示され、組み合わせて検索することで効果的と考えられています。

Googleでは「オートコンプリート」とも呼ばれ、利用者の検索意図を知るための手がかりや、頻繁に検索されている単語の調査としても利用することができます。

検索窓に映画や漫画、ゲームなどのタイトルを入力すると高確率で「ネタバレ」と候補が表示されるのは、結果だけを知りたいという現代人の「情報を効率よく消費したい」という心理が影響しているのではないかと感じることがあります。

そして、「ネタバレ」と同じ頻度で「ひどい」と候補が表示されるのは、無意識に観なくて良い理由、読まなくて良い理由を探している心理が影響しているのではないかと邪推したりしています。

情報を効率よく消費したい

ここまでに何度か述べましたが、現在のインターネットは情報にあふれ、知りたい情報に辿り着きにくくなったと考えています。また、AIの登場により情報があふれ続ける状況は改善するどころか悪化し続けると感じています。

これはあくまでも僕個人が感じている感覚ですが、そんなインターネットの状態が何かと気忙しい現代人にとって「時間をかけずに今すぐ知りたい」という心理を生み出しているように感じています。それにより情報を提供する側にも影響を与えているように感じています。

あるゲーム解説サイトを眺めていると、最短ルートで攻略することが情報提供の目的になっているように感じています。例えば、強敵を倒すための手順が「このアイテムはここにあります。このアイテムはここで強化できます。このアイテムはここで増やせます。対戦時の立ち回りは以下の通りです」とほぼ解答とも呼べる内容で事細かく書かれているような印象を感じています。

これは限られた時間の中で「失敗したくない」「時間を無駄にしたくない」と考える利用者の気持ちを反映した結果であり、運営者や利用者のどちらかに問題があるとは考えていません。

ただ、多くの利用者がゲーム解説サイトの内容をそのままなぞって問題を解決することに慣れてしまった場合、運営者が閲覧者に自力で強敵を倒せたときの充実感を味わってもらいたいと、直接的な解答の掲載を避けた解説サイトに対して「欲しい情報が掲載されていない不親切なサイト」と判断するのではないかという懸念を感じています。

全てのライトノベルのタイトルが説明的ではないはず

一般の小説のようなタイトルのライトノベルもたくさん出版されていると考えています。しかし、どうしてもSNSなどでは奇抜なタイトルの方が話題になりやすい傾向にあります。

そのため、話題性を重視する戦略の結果、僕が似たようなタイトルのライトノベルばかりを見つけることで「ライトノベルのタイトルは説明的過ぎる」と判断している可能性は否定できません。

最後に

ただ、ライトノベルに限らず、商品名と検索性はある程度の相関性があると考えており、頻繁に検索される単語ばかり含まれた商品や、話題性だけに重点が置かれた奇抜な名前の商品や店舗がなくなることはないと考えています。

僕個人としては、名称に含まれる機微がそれとなく感じ取れ、説明的過ぎても、説明的過ぎなくても、パッと見である程度、どんな内容なのか、どんなサービスなのかが分かるほうが嬉しいのですが…

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2004年よりWebサイト制作に携わり、2010年から山口県山口市にて、Webサイトの制作、更新を専門とする個人事業主として制作業務を行なっております。

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