最近では、何かを調べる際に検索サイトで検索する前に、AIに尋ねることも増えましたが、基本的に何かを調べるときはGoogleを利用しています。

過去にYahoo!やgooなど、複数の検索サイトを利用していましたが、各検索サイトの検索エンジンが独自のものからGoogleに変更されて以降、検索結果に大きな変化はないと感じており、今ではある種のGoogle一強という感覚があります。

現在のGoogleで検索の際に、Google アカウントにログインしていると、僕のアカウントから取得できた検索履歴、閲覧履歴、位置情報、端末情報などから、検索結果に、僕の興味があると判断した情報が優先的に表示されるように調整されますが、これを「パーソナライズ」と呼びます。

ほとんどの方は知らないか、すでに忘れていると思いますが、サービス開始直後のGmailは招待制でした。当時はまた招待制だった2005年頃からGmailを使っている僕にとって、Google アカウントには、僕の国籍や性別、年齢だけではなく、僕の20年分の検索結果が詰まっていると言って過言ではありせん。

Googleにはパーソナライズサービスがあった

2005年のサービス開始時は「パーソナライズド ホームページ(Google Personalized Homepage)」と呼ばれ、のちに「iGoogle」に改名した、自分の好みに合わせてページのレイアウトが調整できるポータルサイトサービスがありました。

GmailのWebサイトに行かず、iGoogle上でチャットが利用できたため、当時は非常に便利で僕は重宝していたのですが、残念なことにiGoogleは2013年にサービスを終了しました。

よくよく考えると、この頃からGoogleの検索結果が、Google アカウントの情報の影響を受け始めていたように感じます。

位置情報が検索結果に反映されるような…

僕は2009年に大阪府から山口県に引っ越しをしたのですが、2013年頃には検索結果に「福岡県小郡市」の情報が表示されるようになっていました。

福岡県小郡市の情報が表示され始めた直後は意図がよく理解できていませんでしたが、これは当時まだ処理の精度が曖昧で、山口県山口市小郡を、福岡県小郡市と認識していると推測できたことで「いる場所によって検索結果が異なるのか?」との疑問が生じました。

今でこそ、スマートフォンで「この付近でおいしいカフェは?」「ここから駅までのルートは?」と検索することが当たり前になっていますが、当時の検索サイト最適化(SEO)の考えでは、どこで誰が検索をしても検索結果は全て同じになるとの前提があり、「大阪市 トンカツ」のような単語で検索をした際に、検索結果の上位に表示されるように努力を重ねていました。

しかし、利用者の居場所や好みなどによって「大阪市 トンカツ」で検索をしても、利用者ごとに微妙に異なる検索結果が表示されるのであれば、その前提は崩れることになります。

この流れは、2009年に発売が始まり、その後、右肩上がりで利用者数を増やしていたAndroidを搭載したスマートフォンの影響が大きいと感じています。

スマートフォンの登場

Androidを搭載したスマートフォンを利用するにはGoogle アカウントへのログインが必須になります。つまり、スマートフォンで何かを検索すると検索結果には、端末の位置情報とアカウントから得られるアクティビティが影響する可能性が高まります。

特に、利用者が土地勘のない場所にいる場合、スマートフォンから得られた位置情報から近隣の観光地や飲食店を提示してくれるため、利便性を感じることができるでしょう。

ただ、検索サイト以上に、SNSではよりパーソナライズ機能の影響が大きいように感じています。アカウントの作成時に登録した情報以外に、フォローしているアカウントの属性や「いいね」「リポスト」などの内容からも、興味のある内容をある程度予測していると感じています。

また、最近のSNSでは永遠に情報が表示され続ける無限スクロールが実装されており、気が付くと「おすすめ」に表示される情報を見続けていることがあります。

つまり、スマートフォンの登場によりインターネットが利用しやすくなった反面、検索サイトやSNSでは、ほとんどの利用者が無意識でのパーソナライズ機能の影響下にいると考えられます。

パーソナライズ機能は決して「悪」ではありません。現代人の情報の即時性に対応するための機能の1つとして、絶えず情報が増え続け、探し出すのが容易ではないインターネットから、自分の興味がある情報を見つけ出しやすくする点では非常に有効です。

フィルターバブルがどのように怖すぎるのか

ここで本題の「フィルターバブルが怖すぎる」に戻りたいと思います。まず、フィルターバブルとは、パーソナライズ機能により、利用者が知りたい情報だけが表示され、自分の考えとは異なる意見や情報に触れる機会が減ってしまう現象を意味します。

検索サイトや各SNSは、僕のことを「日本人の男性で山口県在住の可能性が高い」と推測していると考えています。「おすすめ」に表示される内容も僕の属性に合わせた情報が多くなると判断できます。

タイムラインに表示されている情報から「このSNSには若者がいない。若者離れが進んでいる」と考える方がいるかもしれませんが、そのSNSは若い世代も利用しているものの、パーソナライズ機能によって同世代のポストしか表示されていないことが認知できていない可能性は否定できません。

そして何より、僕の目の前に表示されている情報が、僕の属性の影響下にあることを僕は認知できず、設定画面で僕の属性は調整できても、完全に取り除くことはできません。それにより、僕が見ているものは、僕が見たいものではなく、アルゴリズムによって見せられているものではないかと感じることがあります。

つまり、自分が本来調べたいものや知りたいものが、パーソナライズ機能によって探し出せなくなっているかもしれないことと、それを自分自身で認知できないことに、ある種の不安を感じています。

ある意味でどうしようもない問題

検索サイトは有益な情報を利用者に無料で提供することで、広告を掲載する場を創出するとの側面がありますが、検索を事業として提供している以上、広告収入との兼ね合いや特定の情報源への隔たりなどにより、表示されている情報に事業者の意図的な調整が全くないとは言い切れません。

しかしながら、これはサービスを無料で利用できることとのバランスの上で成り立っており、これ自体が悪いと判断することはなかなか難しいところです。

ただ、利用者は検索結果に表示される情報にある程度の信頼性を感じていても、表示されている情報が実際には何らかのフィルターがかかった状態であったとしても、アルゴリズムの調整の有無や程度を知る術はほとんどありません。

利用者が興味があるものを延々と見続けられる利便性がある半面、ふとした突然の出会いの機会が減少することで視野が狭まり、その結果、エコーチェンバー現象を引き起こしているとしても、やはり僕には認知できないかもしれません。

AIでも同じようなことが起きているのでは?

ブラウザなどのソフトウェアがWebサーバにアクセスする際に、「ユーザーエージェント(User Agent)」と呼ばれる、自身を識別するための文字列を提示しています。この文字列には「iPhone」や「Googlebot」などが含まれており、これにより利用者が人間かプログラムか、どのような端末でアクセスしているかを判断することができ、アクセスログ解析などで利用されています。

一定の知識があれば、ユーザーエージェントは容易に変更することができますが、グローバル企業やコンプライアンスを遵守する企業が開発した検索用クローラやAIは、自らの存在を正しく明示していると考えられます。

つまり、AIが学習のためにWebサイトを訪問した場合、WebサーバにAIと認識されていることになります。

仮にWebサービスの提供側が、AIからのアクセスがあった場合、AIに学習されないように、本来は人間の利用者が見ている情報とは異なる情報を提供することが可能になります。特に、AIに勝手に学習されることを嫌う人間が増えた場合、AIに学習させないようにする対策はより一層進むかもしれません。

この場合、AIからの回答が必ずしも正しい学習データによって導かれているわけではない可能性が高まります。人間が経験しているパーソナライズやフィルターバブルとは少し趣が異なりますが、AIもまたフィルターバブルの影響下にあると考えることができるかもしれません。

学習データの偏りによる誤学習やハルシネーションなど特有の問題はありますが、AIは人間のような認知バイアスの影響を受けにくいとされています。もし、AIの思考がサービスを提供する経営者や開発者によって、特定の考えに固執するように調整がされているとしても、研究者や利用者からの指摘によって是正される可能性が期待できます。

しかし、人間が認識できないスピードで学習することができるAIが、意図的に誤学習を促された場合、開発者や利用者がそのことをどこまで認識できるかは全くの未知数ではないかと感じています。

最後に

そんな事に不安を感じつつも、今日も何かを検索して、おすすめに表示されている猫の動画を延々とスクロールをしながら眺めて過ごしています。

これはもはやどうしょうもない問題だと感じつつ…
とにかく、フィルターバブルが怖いのです。

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2004年よりWebサイト制作に携わり、2010年から山口県山口市にて、Webサイトの制作、更新を専門とする個人事業主として制作業務を行なっております。

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